熱 燻り 夏

人の熱が恋しい。最近どうしようもなくそんな感情が心の底からぶわりと溢れ出てくる。それはマグマのような熱い溶岩ではなくて、大きく膨らんでは空に消えていく湯気のよう。

 

夏になったからなのかな。長かった梅雨が明けて、燦燦と光輝く太陽につるつるの肩をこれ見よがしにむき出しにして歩く女の子。冬に元カレとの別れも脱毛も済んだのかな。楽しそうで羨ましい。私は夏が嫌いだ。

私は好きなものよりも嫌いなものを上げるほうが得意な人間なんだと思う。「一番好きな食べ物は?」と聞かるとすぐには答えられない。「一番好き」という感情をうまく知らないからだ。(しかし大倉忠義さん。あなただけは私が胸を張って即答できる、人生ただ一人の推しです。大好きです。)

「嫌い」という感情は簡単に判断できるから楽だ。理由も簡単に上げられる。「噛んだ瞬間にぶしゃって中身が出てくる感じが本当に嫌いなんですよ」と言えば大体の人が理解してくれる。(トマト)

しかし「一番好き」となると厄介だ。そもそも一番ってなんだ。まだ出会ったことのないもので溢れている中で簡単に一番といっていいのか?????

 

なんて、本当は逃げているだけなんだって知ってる。怖いんだよね、一番を作ることが。だから恋もうまく行かないんだと思う。どこかで逃げ道を持っていないと怖い。自分の中の「一番」を信じて突き進むのは自分のすべてをさらけ出してぶつかることだと思う。私にそんなのことはできない。自分でも把握していない自分を相手に知られるのは、ただただ怖い。

だから、私には自分の熱を分け合う相手がいない。いないのか、作ろうとしていないのか。ほしいと思いながらも、自分のすべてをさらけ出すのは嫌だという。なんてわがままお嬢様なんだ、と自分でも思う。このままだとビニールハウスの中で枯れてしまうのでは、という恐怖もある。

自分でビニールを破く必要がある。でも心のどこかで車上荒らしのように(?)ビニールハウスを切り付けてズカズカ入ってきて私の腕を引っ張ってくれる、そんな人がいるんじゃないか、なんて夢を見てしまっている自分がいる。恥ずかしい。お前いくつなんだよって感じだよね。

 

夏の夜道。ふと虚しさに駆られたとき。私のこの燻った感情をぶつける相手がただほしいんだ。同時に、何も言わずに隣で座っていてくれる相手が欲しいんだ。電話越しでいいから、あなたの熱を感じたいだけなの。

ねえ、私はどうすればいいのかな。どうすれば、この夏夜の熱じゃなくあなたの熱で眠りにつくことができるのかな。